石油で読み解く「完敗の太平洋戦争」

『石油で読み解く「完敗の太平洋戦争」』岩間敏、朝日新書、2007

主に太平洋戦争における日本の石油事情を解説した本。石油の必要性はわかっていながら、現実にはまったくそれに対応した行動をとっていなかった日本の実体を暴露する。サウジアラビアからの購入計画はアメリカに手をまわされてつぶされ、ほかではわざわざ供給を止める結果になる行動ばかりとっていた日本。結局開戦を推進していた軍部には石油事情がわかっていた人物はおらず、事情を知って開戦に慎重論を唱えていた見解は無視されていた。敗戦前夜には石油はほとんど底をつき、艦艇の出撃はもちろん、飛行機もろくに飛べないような状態で刀折れ矢尽きて降伏に追い込まれたさまが描かれている。
また、戦後も石油開発の「上流部門」を欠いて成長してきた日本の石油産業のいびつな姿が批判されているのだが、この部分については、日本が上流部門に積極的に投資していればどのような結果が出ていたのかについて、きちんとした分析を書くことが必要だろう。著者自身が石油公団の出身者だけに、そちらのほうが戦争中のことよりも、ちゃんと書けるはずだと思うが…。