原発・正力・CIA

原発・正力・CIA』有馬哲夫、文春新書、2008

日本の原子力開発、テレビ放送、世論工作などの問題をめぐる、正力松太郎とCIAの関係を描いた本。正力には、原子力発電を立ち上げることを通じて政治的実績を積み上げ、やがては総理の座を狙う思惑が、CIAには第五福竜丸事件によって悪化した日本の対米世論と反核感情を改善しようとする思惑があり、両者がかみ合ったりすれ違ったりしながら虚々実々の駆け引きが展開される様子が迫力をもって描写されている。正力とCIAの関係が、日本の政治史、日米関係、テレビ事業や原子力開発の黎明史などと深く結びついていることがわかって、たいへんおもしろく読めた。特にCIAが日本にエージェントを獲得し、それと協力するにあたって、どのような基準で協力の可否を判断しているかという部分は、アメリカのインテリジェンス工作史に直接つながっていて興味深い。文章もこなれていて、一気に読める。