蠢く!中国「対日特務工作」マル秘ファイル

『蠢く!中国「対日特務工作マル秘ファイル』袁翔鳴、小学館、2007

中国の対日工作(スパイ、抱き込み、政界、マスコミ等への浸透など)を豊富な実例をあげて告発する本。中国の対外工作は単なる情報収集ではなく、外国有力者を抱き込んで中国にとって有利な環境を作り出す政治工作に力点がおかれているというのは以前から言われていたことなので、その点には驚かないが、具体的な手口やどのような人々が工作の対象にされているかについては知らないことが多かったので非常に参考になった。特に創価学会公明党池田大作に対する周到な工作については知らないことが多く、この本ではじめて具体的な経緯を知ることができた。
それにしても政治家、マスコミから、自衛隊や大学にまで及ぶ工作活動の規模と緻密さには驚くばかりで、この分野で完全に日本はやられっぱなしである。これはスパイ活動を取り締まる法律だけでなんとかなるようなものではなく、政界内部に中国の工作活動の手が伸びている以上、工作活動に対策をとろうとすれば後ろから弾が飛んでくることになりかねない。読んでいて非常に暗澹とした気分にさせられる。本書の内容上、当然著者は匿名であり、またこの手の本では信憑性が問題にならざるを得ないが、取材の緻密さ、中国の工作活動に対するほかの情報源からの知識などからしても、概して信じるに足る内容だと考える。