ラブホテル進化論

『ラブホテル進化論』金益見、文春新書、2008

ラブホテルの歴史については、すでに井上章一の『愛の空間』があるから、もういいんじゃないの?と思っていたが、書店で手にとってみてちょっとおもしろそうだったので、買って読んでみることにした。基本的に井上の本の枠組み自体を大きく出るものではないのだが、ラブホテルの建築家、デザイナー、経営者に幅広くあたって(利用者側の声のほうが薄いのは、まあ仕方がない)、そちら側から見た証言をまとめているところがおもしろいといえばおもしろい。著者の博士論文の一部のようだが、博士論文とするには分析枠組みのオリジナリティがもっと必要だと思うのだが…。著者が学部の卒論で井上のところに直接資料を借りにいき、後で完成した論文を送って井上に「内容はつまらないけど、大学院に合格してよかったね」といわれてへこむエピソードが出てきて、ちょっとほほえましい。基本的に素直でまめな人なんだろうなと思う。大きく顔写真が出ていて、けっこう可愛い。言っちゃ悪いが著者が本を出せた理由の3割くらいはこのあたりにあるかもしれない。