やめたくてもやめられない

『やめたくてもやめられない』片田珠美、洋泉社y新書、2007

『薬でうつは治るのか』の著者による薬物依存社会批判の続編にあたる本。著者の基本的立場は、精神の病に対する薬物治療の効果に対して疑問を投げかけ、そのような治療がかえって薬物依存をもたらしている現状を批判するところにあるので、薬物の「治療」への効果に対する批判は手厳しい。また薬物に対する抵抗感が下がることによって「薬漬け社会」の進行が早まることに対しても非常に批判的。またそういう傾向が消費社会での「あきらめない」方向へのドライブによって加速されていることにも批判的。
著者の主張はわかるのだが、薬物の副作用の「程度」として、覚せい剤大麻、アルコール、抗うつ薬抗不安薬はそれぞれかなりの違いがあるだろう。著者も文中で「抗不安薬は処方を守っていれば副作用は大きくない」と認めている。だったら、「薬で楽になるのだったら、それにこしたことはない。一生薬を飲み続けてどこが悪いのか」という意見(確か『人格改造マニュアル』で鶴見済がそういう趣旨のことを書いていた)に対して、著者はどう答えるのだろうか。最初から「薬は気持ちを調整するための便利な道具」と考えている人(特にアルコールについてはそういう考えは珍しくはないだろう)に対しては、覚せい剤などの一部の薬物を除けば著者の批判はあまり届かないような気がするのだが。