ロスト・メモリーズ

「ロスト・メモリーズ」、チャン・ドンゴン仲村トオルほか出演、イ・シミョン監督、韓国、日本、2002

だいたいのあらすじはどこかで読んで知っていたのだが、どんな映画かと思ってとりあえず見てみた。ちょっと長すぎ。銃撃戦の場面もあんまり爽快感がないし、はっきりいってどこがおもしろいの??という疑問が…。
映画としてはそんなにおもしろくないのだが、この話の内容のほうはいろいろと興味深い。安重根伊藤博文を暗殺しなかったおかげでその後の歴史が変わって、日本の朝鮮統治が2009年まで続き…というのだが、なんでそうなるのかという途中の説明はまったくなし。常識的に考えれば伊藤が暗殺されても韓国併合は行われたのだし、そんなことがあろうとなかろうと歴史への影響は大したことはなかった、ということになると思うが、韓国人的には違うらしい。日本人がタイムマシンを奪って歴史を改竄していなければ、2009年に朝鮮半島は統一し、韓国は世界の強国に…というあたりもご愛嬌。まあ「日本人による歴史の改竄が諸悪の根源」ということにもっていきたいんでしょうね。
あとは映画の中の小さなギミック、車が左側通行になっていたり、パトカーの塗装が日本風だったり、というあたりをちょっと楽しめるくらい。しかし、ロバート・ハリス『ファーザーランド』(映画はしょぼい。小説のほう)での、大ベルリンの壮麗な様子のようなもうひとつの歴史を強いインパクトで見せてくれる材料は見当たらない。考えてみると、日本の架空戦記ものも、個々の戦闘の話ばかりで、歴史自体がひっくり返っていた場合のその後の世界ということではあまりおもしろい作品がないのだ。誰か書かないかなあ。