新しい神の国

『新しい神の国古田博司ちくま新書、2007

アジアというが、日本と中国。韓国はまるで違っていて、同じくくりで考えることに無理があり、日本は「異なる文明圏」として捉えられるべきだという本。「脱亜」というのはもともと日本はアジアの一員という前提で考えているので、そういう考えが間違っているという前提に立てばむしろ「別亜」というべきだという。この主張自体はどこが同じでどこが違うかという基準の取り方次第でいろいろ言い方があると思うので、その是非を論じるのはどっちでもいい。むしろ著者の意図は日本の左翼によくあるアジア主義を批判することにあり、それには説得力を感じる。左翼に限らないが、だいたい日本のアジア主義は西洋(戦後はアメリカ)に対する過剰な反発とコンプレックスの産物でそれ以上の内容はない。それをはっきり言ったところがこの本の価値。
著者が2ちゃんねらーだとはっきり言っているのは、アカデミズムの人には珍しいのでおもしろい。まあそこまで持ち上げるようなことではないし、生暖かく見守っていればいいと思うが。