昭和陸海軍の失敗

『昭和陸海軍の失敗』半藤一利秦郁彦ほか、文春新書、2007

文藝春秋に載った座談会を本にしたもの。前半が陸軍を扱い、出席者は黒野耐戸部良一半藤一利福田和也保阪正康、後半が海軍を扱い、出席者は戸高一成秦郁彦半藤一利、平間洋一、福田和也
基本的には陸海軍の著名な将校を一人ずつ取り上げて人物や背景を論じていく、人物伝をまとめたような本。しかし全体としては陸海軍の組織的な部分も含めた戦争期の陸海軍論になっている。内容は簡単に言えば、陸海軍はともに組織として戦争を戦えるような体制になっておらず、派閥や組織利益が幅をきかせる官僚組織以外のものではなかったというもの。個人として出来のいい人物がいても、それを使えるような組織にはなっていなかった。平時の官僚機構が戦時になってもいっこうに変わっていない。またそういう組織が明確な大戦略がないまま国家の政策決定に関わったことは、結果として最悪だった。
参考になったのは、海軍、とくに良識派とされる米内光政や山本五十六を批判している部分。米内については上海での強引な拡大方針の主張や南進論への積極的態度が、山本については太平洋戦争時の作戦指揮官としての実績が問題にされている。こういう問題点は阿川弘之の評伝では取り上げられていない。