世界を食いつくせ!

『世界を食いつくせ!』アンソニー・ボーデイン(野中邦子訳)、新潮社、2003

アンソニー・ボーデインの「キッチン・コンフィデンシャル」の次の本。こちらはテレビの取材(「アンソニー世界を食らう」"No Reservations")やその他の仕事またはプライベートで世界各地を訪れて食べまくる記録。前作もそうだったが、アンソニーは、おいしいものをおいしそうに表現する才能にあふれている。どの章を読んでも、そこに出かけて食べたくなる料理がいっぱいだ。東京編は、テレビでも見たが、この本のほうが(料理の実物をみることができない点を除いても)はるかにおいしそう。懐石料理の回は熱海の高級旅館だが、東京取材の時は、新宿のホテルたてしなに泊まったとあるので、全然大名旅行じゃないことがわかる。食べ物のほうは高そうなすし屋にも、有楽町の焼き鳥屋にも行っている。短い滞在でも食べるべきものをしっかり食べていていいね。
いちばんいいのは、子供時代をすごしたフランスにカキを食べにいく話とポルトガルで豚の解体に立ち会う話。食物に対する愛情と家族とその思い出に対する感情が伝わってくる。