近代日本の右翼思想

『近代日本の右翼思想』片山杜秀講談社、2007

戦前期日本の右翼思想を解剖する本。非常におもしろい。左翼思想のほうはいろいろあっても理解可能なのに、右翼思想の方はそもそも理解できない、というかそれって思想なのか?と思っていたが、この本を読んで疑問の半分はとけた。右翼思想ももちろん思想でそれなりの筋道はあるのだ。ただ、それが「理屈」を強力に拒否するところに立っているので、入りづらいだけなのだ。それにしても著者の読み解きの手口はとてもたくみで、おもしろい。各章はきちんと関連付けられていて、通読すると日本の右翼思想がどのように「ああいうもの」になっていったのかがクリアにわかる。
また右翼思想に使われた材料は、今でもいろんなところにそうとは気がつかない形で散らばっていることにも認識を新たにさせられた。身体論しかり、オカルト、エコロジー、その他もろもろ、昔のネタはいまでも元気に生きているのである。また今の日本を変えてしまいたいという出発点がいつのまにやら、美しい死に様を求める話になっている、というアクロバットは読んでいて目が回りそうだけど楽しい。ためになって、なおかつ楽しい。この分野の良書は少ないだけに貴重な価値がある。