童貞としての宮沢賢治

『童貞としての宮沢賢治押野武志ちくま新書、2003

あまり宮沢賢治をまめに読んでいるわけではないのにこういう本を読むのはどうかなと思っていたが、読んで見るとけっこうおもしろかった。童貞についての文学者たちの葛藤からはじまって、宮沢賢治の作品における「無償の贈与」という話で締める。はっきりいって、自分の頭の中ではこの本の各章の内容はあまりつながらないのだが、それでもそれぞれの章が十分おもしろいので退屈しないで読める。読んでためになるというよりは、いろんなことを考えるとっかかりをつかませてくれる。文章も素直で、すっと頭に入る。ただ「童貞を捧げることは贈与になりえない」という主張にはそうかなあと思うのだが。