東京裁判の謎を解く

東京裁判の謎を解く」兵頭二十八別宮暖朗光人社、2007

東京裁判に関係した人々、被告人だけでなく、拘留されながら起訴されなかった人、判事検事、連合国側の指導者などさまざまな人々の事跡をつづることを中心とし、検察側、弁護側のシナリオ、死刑判決の思惑などに言及しつつ、東京裁判を批判した本。法解釈上の妥当性については、過去の法解釈上の議論に対する批判の引用と批判がないので、それについてはなんともいえない。しかし、誰がどういう罪状で法廷に立たされ、死刑とされ、あるいは容疑者扱いだけで釈放されたかについての事実がえんえんと並べられることはそれだけで十分おもしろい。どういう人物が死刑になり、あるいは禁固ですんだかを見ていくと、検事側(の背後にいる連合国首脳)の思惑もだいたい見える。著者があとがきで書いているとおり、東京裁判についての本は汗牛充棟なのにもかかわらず、書かれていないことはあまりにも多い。