検証 戦争責任 I

『検証 戦争責任 I』読売新聞戦争責任検証委員会、中央公論新社、2006

読売はとっていないので知らなかったのだが、去年こういうタイトルの企画連載をやっていたらしく、それを単行本化したもの。しかし、「戦争責任」といってもどの立場から考えるかで意味はぜんぜん違ってくる。読売新聞がどういう立場で考えているかは、後半のシンポジウムでの司会の冒頭発言を読めばよくわかるのだが、それまではっきりしたことを書いていないのはちょっと不親切という感じがする。
前半は、陸軍参謀、革新運動といった個別のテーマについての記事とそれについての学者、歴史家のコメントがセットになっていて、後半にシンポジウムがくる。シンポジウムの参加者は、御厨貴牛村圭加藤紘一櫻井よしこ原口一博保阪正康という面々。前半のコメント部分も、右から真ん中やや右よりあたりの立場の人たちからとっていて、「左」側からのコメントはない。そういう意味で、「右」「保守派」の中で「戦争責任」論がどのようにとらえられているかを知るための書物である。
ここでいう戦争責任とは、どちらかといえば国内向けの、「戦争の原因となった事件、人物」に焦点があてられているので、太平洋戦争の原因論といったほうがよい。特に前半はほとんど予備知識のない人向けに書かれているので、そういう人には役立つだろう。後半のシンポジウムは、櫻井よしこのような「かなり右」と加藤紘一のような「ほぼ真ん中よりの右」の立場の対比がおもしろい。引き返し不能点がどこだったかについての見解も人によってバラバラである。政治的立場が極端に違わない人同士の議論でもこうなので、問題の難しさを再認識させられる。