空気と戦争

『空気と戦争』猪瀬直樹、文春新書、2007

猪瀬直樹東工大での講義を本にしたもの。基本的には『昭和16年夏の敗戦』と同じエピソードであるが、歴史についてあまり知らない理系の学生に対する講義ということで、戦前日本と戦後日本の連続性、軍隊の組織などの部分にわりと頁が割かれている。結局、戦争の帰趨について正確なシミュレーションをしても、期待していた話を持ち込まれなかった指導部からは渋い顔をされただけで、何も実質的な影響を与えることはできなかったという話。しかし猪瀬直樹が強調したかったのは、上層部の喜ばない話であっても必要なことは言うという総力戦研究所の若い職員のことであり、周りが「空気」に流されていても、個人として言うべきことは言わなければならないということだろう。確かに戦前と戦後はそういう意味でつながっている。これを「軍国主義」とか「平和主義」というつまらないくくりで片付けてしまうことは、もうそろそろやめないといけない。「戦後の総決算」というのは本来そういう意味でないといけないと思うのだが。