西園寺公望

岩井忠熊『西園寺公望』、岩波新書、2003

最後の元老、西園寺公望の評伝。西園寺の生涯は明治維新から太平洋戦争直前に及び、特に政治的に活躍した時期は明治の終わりから大正、昭和にわたるから、西園寺の伝記はそのまま帝国日本の歴史を概観することになる。著者は、『西園寺公と政局』のほか、西園寺の私信その他を広範に渉猟して、この大政治家の生涯をよくまとめている。筆致も著者なりの立場は明らかにしている点で、基本的に公正といえる。
ただし、教養と識見を備えた西園寺のような人物にして、結局大陸への強硬な進出策や軍部台頭を止められなかったことの理由については、著者の結論はやや西園寺に厳しいような気もする。