金正日と日本の知識人

川人博金正日と日本の知識人』、講談社現代新書、2007

北朝鮮問題についての日本の知識人の言論を批判する本。俎上にのせられているのは、姜尚中、和田春樹、佐高信水島朝穂。中心的に批判されているのはやはり姜尚中。姜が、「正義よりも平和」といっているのは、それはそれで成り立つ理屈なのでそこまではいい。しかし、この論争を読んでもわかるが、姜のいっていることは単なる金正日体制の延命支持以外のものではない。またそのことは姜が他のところで述べていることとも矛盾するだろう。姜尚中の議論に対する姿勢も、罵詈雑言のたぐいが多く、読むに耐えない。
姜尚中に限らないことだが、北朝鮮問題については、「北朝鮮の体制を擁護するものではないが」とことわりつつ、実際には単に北朝鮮の現体制を擁護する者が多い。個人的には、著者の北朝鮮に対する政策的意見は現実的でない部分があると思うが、北朝鮮における人権擁護という観点から、親北朝鮮的見解のきちんとした批判をしている人は少ないので、その点で意味がある。