年金問題の正しい考え方

盛山和夫年金問題の正しい考え方』、中公新書、2007

年金問題について、主要な論点を取り上げて、さまざまな意見の当否を論じた本。論点がきれいに整理されていて非常に有益。一読していままで自分が年金問題についてもっていた知識の多くが間違っていたり、見当外れであったりしていたことがよくわかった。数字の積み上げをていねいにしている本なので、ざらっと流し読みしたのではきちんと把握できないが、おそらく年金問題についてここまで話があさっての方向にいってしまっているのは、そのことに関係があると思う。この本は大学を出ていたり、高校でもそれなりに理解力がある人には十分わかる本だが、もともと年金問題はいろんなパラメータの設定の仕方で結論がかなり変わってくる問題なので、その点をとばして議論することができない。ちょっと聞きかじりで、論点の所在を把握することがそもそも無理なのだ。それを選挙用に無理やり圧縮して話をつくってしまうので、未納問題や社会保険庁の仕事ぶりなどの、どちらかといえばどうでもよいことに議論が引きずられているのだと思う。またテレビの討論などにも不向きな題材で、ある程度まとまった本や論文を読まないとちゃんと論点を把握できない。著者は年金問題の基本的なポイントの所在を説明することを政府がサボっていることを問題にしている。たしかにそれはそうだと思うが、この本に書いてあることをどのくらいの人がきちんと理解できるかというと、これはけっこう難しい問題だと思う。