参議院なんかいらない

村上正邦平野貞夫筆坂秀世参議院なんかいらない』、幻冬舎新書、2007

参院議員三人による参議院についての鼎談本。いろんな意味で非常におもしろい。特に参院自民党がどういう形で権力を握っていったかについての記述が興味深い。歴代の参院議長や参院自民党幹部たちと首相の関係もおもしろい。参院議席をもち、さまざまな問題を知り尽くした著者たちにしか書けない本だと思う。タイトルはもちろん反語的な意味でつけられていて、本の趣旨は、「参院を真に意義あるものにするためにはどうするか」というものである。しかし読んでみて、自分としては「参議院はほんとうにいらない」という自論をますます強く確信するようになった。本書で平野貞夫がのべているのだが、参院は首相を不信任することができず、また首相指名の優先権は衆院にある。そして参院には解散がない。つまり議院内閣制の下では参院は、衆院の多数派=内閣の意思から分離している。これまでそのことが目立たなかったのは、自民党の優位が衆参両院で確立されていたからであって、そうでなくなった現在では、参院は議院内閣制の撹乱要因にしかならないということがはっきりしている。
本書の後半では参院改革案についていくつかの具体案が示されているが、その実現性はともかく、かりに実現したとしてもうまくはいかないだろう。参院を各県同数の地方代表にすることは、人口の少ない地方(つまり人口の多数をしめる都市住民ではない人々)の力を強めるだけである。また道州制ができたらどうするのか。比例区を廃止して全国区に戻し、選挙運動は全部公営にしろという案では、知名度のある人(つまりタレント、有名人)の数を増やすだけ。そもそも国民の直接選挙を前提として「有識者による参院」をいまどき考えることが見当違いである。参院のエキスパートにしてこの程度の案しか出てこないのだから、参院改革はムダと考えざるを得ない。