現代アメリカのキーワード

矢口佑人、吉原真里編『現代アメリカのキーワード』、中公新書、2006

アメリカについて81のキーワードをとりあげ、それについてのエッセイを集めた本。中公新書にしてはけっこう厚く、350ページほどある。テロ事件以後の政治的な問題が多くとりあげられているが、他にもナショナル・パブリックラジオ、オンライン・デーティング、マーサ・スチュアートといったような、聞いたことはあるがよく知らないようなこと、ほとんど知らないようなこと、文化や芸術分野のことなど、幅広くテーマが選択されている。一つ一つのエッセイはけっこう中身が濃いもので、読んでいて非常にためになる。あえて問題をあげるとすれば、書き方がリベラルよりに偏っていることだが、保守的な立場からのエッセイとリベラルな立場からのエッセイが同じ本で混在するとわけがわからないことになってしまうので、これは仕方ないだろう。何より、読んでいて退屈させない。書き手がきちんと選ばれているからだろうが、大事なことだと思う。