マンガ狂につける薬 下学上達篇

呉智英『マンガ狂につける薬 下学上達篇』、メディアファクトリー、2007

著者の『ダ・ヴィンチ』誌連載を単行本化したもの。すでに同じタイトルで出ているものの続編になる。「マンガと活字をブリッジする」と著者が書いているが、これが高いレベルでできるのは著者以外の人にはそうそうできないことだろう。まずマンガと活字本の両方の分野を広い範囲でカバーできている人が日本の著述家にほとんどいない。特にマンガについて、マイナーな傑作を拾い出すのはふつうの人間には非常に難しい。マンガ喫茶においていないものだとお手上げである。マンガは普通、図書館においていないし、場所塞ぎだ。著者は、以前「原則として本は買わず、図書館を利用する」と書いていたはずだが、マンガについては同じことはできないだろう。しかも単行本化されたものだけではなく、定期刊行されているマンガ雑誌も広く目を通しているのだ。図書館くらいの収書スペースがある家に住んでいる富豪ではなさそうなので、まったくふしぎだ。しかし、おかげでベストセラーでないマンガの良作を拾える。しかも取り上げられている活字本は、絶版書、理系の本(さすがに専門書はないが)、推理もの、マイナーな作家の本その他、手に取る機会がほとんどない本が多くあげられており、二重におトク感がある。この本が1200円というのは叩き売りに近いものがあると思う。