ベルリン・フィルと子どもたち

ベルリン・フィルと子どもたち」,ロイストン・マルドゥーム、サイモン・ラトルほか(ドキュメンタリー)、トマス・グルベ、エンリケ・サンチェス・ランチ監督、ドイツ、2004

ラトルの子どもたちを集めて、「春の祭典」をベルリンフィルで演奏し、それに合わせて群舞をしようという思い付きのてんまつを描いたドキュメンタリー。子どもたちといっても、8歳のほんとの子どもから、20歳以上の若者までいろいろ。しかも移民は多いし、大学にいくつもりがないと自分でいっている子どもが多い。要するに落ちこぼれを集めてダンスをさせようという企画なのだ。
やる気なし、規律なし、集中力なしの落ちこぼれを仕込む振付師のロイストン・マルドゥームの迫力がすごい。また彼は「ベルリンフィルと舞台に立つのだから、ちゃんとやれ」といった言葉は一切口にしない。それでダンスの経験がない初心者を、基本的な動きから全部仕込むのだから並みの腕ではない。一方、ラトルは、音楽の力についての自分の理想をひたすら語るだけ。こんなのうまくいくのか?と思ってみていたら、最後はなんとか公演を成立させるところまでもっていく。振付師の力か、ラトルとベルリンフィルの力か、子ども自身の力か、それとも音楽のもつ力なのか。