集中講義!日本の現代思想

仲正昌樹『集中講義!日本の現代思想』、日本放送出版協会、2006

思想史家の著者が、80年代以後の「日本の現代思想」について、非常に要領よくまとめた本。前史となる日本のマルクス主義思想や「サヨク思想」についても、きちんとカバーされている。「日本の」現代思想といっても当然ヨーロッパのそれとセットにして語らないと意味が通じないので、「現代思想が日本のコンテクストでどういう意味をもたされてきたか」がざっと概観できるようになっている。著者の豪腕にはいつものことながら敬服させられる。
かつてのような現代思想の輝きがどこかに消えてしまった今では、この本に書かれていることがほんとうに歴史上の出来事になってしまっていることをひしひしと感じる。そういえば昔は、内容はよくわからなくとも、思想の中に何か未来につながるすばらしいものがつまっているような風潮がけっこうあったのだ。そういう思想バブルがとんだあとで、価値のあるものを拾い上げていく仕事がほんとうの思想史家の仕事なのだろう。