ポル・ポト<革命>史

山田寛『ポル・ポトk<革命>史』、講談社、2004

ポル・ポト伝』の翻訳者で、自身、ポル・ポト政権期のカンボジアを取材しているジャーナリストの著者によるポル・ポト政権の略史。政権誕生までの歴史は比較的簡略に叙述されており、ポル・ポト政権成立後の歴史に力点がかかっている。ポル・ポトが死去し、関係者の裁判をめぐる協議が続いている状況で書かれているので、『ポル・ポト伝』がカバーしていない時期の事柄もフォローされている。
ポル・ポト政権期の支配がなぜあのような過酷なものになったかについての記述はやや隔靴掻痒という感じもするが、おぼろげながら背景になった事情はわかる。文革期の中国の急進主義に強く影響された指導者が、政権掌握後の準備がないままで支配にあたり、自分たちの抽象的な理想を一方的に実現しようとしたこと、「敵」に対する病的な恐怖心といったことがやはり重要なようだ。著者は最終章で、政権要人たちがもっていた家族に対する愛情を皮肉な現象として強調しているが、不信感の虜になっていた人にとって家族の重要性が強まることはさしておかしなこととは思われない。それよりも、過酷な支配のアイディアがどのように育っていったのかを、突っ込んで分析してもらいたかった。