三四郎はそれから門を出た

三浦しをん三四郎はそれから門を出た』、ポプラ社、2006

三浦しをんのエッセイは全部読んだはずと思い込んでいたらまだあった。ただし、「しをんのしおり」収載のものではなく、読書エッセイを中心に、雑誌に掲載されたエッセイをまとめたもの。読書エッセイは、対象となる本によって出来不出来の差が激しい。簡単に言うと、著者のお得意分野の本についての文章はおもしろいが、シリアスな本、特に戦争や死、暴力関係の本についての文章は浅い。つまらない。大西巨人神聖喜劇』のような長編も読んでいるのだが、どうもおもしろくない。あの長さは好きでないと読めない長さなので、キライな本を無理して読んでいるのではないと思うのだが。
以前ラジオドラマに翻案されたものを聞いた、ヘルガ・シュナイダー『黙って行かせて』も載っていた。この書評を読んで、「これは読む価値なし」と確信。ただし、自伝小説とは知らなかったので、それには驚いた。
個人的には読書関係じゃないエッセイの方がよく書けていると思う。特に弟に関する文章は、そこはかとなく空気のような愛情が漂っていてなんともいえない味。