格闘する者に○

三浦しをん『格闘する者に○』、新潮文庫、2005

単行本は2000年刊行。著者の処女作。最初の作品としてはそこそこよく書けている。主人公と周りの学生たちの造形はいい。それから巻頭に出てくるおとぎ話もいいし、小説の中でうまく使っている。就職活動の描写は、たぶん著者の実体験をもとにしてのものか。ここがいちばんおもしろい。大手出版社の募集には雲のように人があつまるから、まあこういう感じになるのか。もっと小さい出版社での求職活動も、どんなものか見てみたかったので、のせてくれるとよかったのだが。全体としてはちょっとおもしろいという程度だが、これを出版にもっていった編集者は慧眼だと思う。