グーグル八分とは何か

吉本敏洋グーグル八分とは何か』、九天社、2007

著者はサイト「悪徳商法マニアックス」の管理者。自分のサイトがグーグル八分の対象である。いままでグーグル八分という言葉、いくつかのサイトがその対象となっていることは知っていたが、どういう理由でどのくらいのサイトがグーグル八分となっているのかについてはよく知らなかった。確か誰かの本でグーグル八分の問題について読んだ記憶があるのだが…。
内容はとてもおもしろかった。なにより、「どういうサイトがどういう経緯でグーグル八分になっているか」がいろいろな事例をあげて紹介されているので、わかりやすい。簡単にまとめれば、訴訟や紛争の対象となっている企業がグーグルに対して名誉毀損その他を理由として、グーグル検索結果からの削除を要求した結果のようだ。これで自社に対する悪評が流れることを防ぐことができるが、逆に企業の問題を指摘しようとしている側は事実上自分の発言を社会的に封じられてしまうことになる。グーグルはおそらく訴訟リスクを避けるためにやっているのではないかと思うが、グーグル側が削除基準を明確にしていないため、詳しい理由はわからない。
いくつもの問題がからんでいるが、やはり最大の問題はグーグルが社会的に独占的な影響力を行使できる立場になったことと、そのグーグル自身の企業ガバナンスが十分に維持されていない、言い換えればグーグルが自己の社会的影響力とそれに伴う社会的責任を自覚していないことだろう。文中に出てくるように、裁判所が判例を通じて検索エンジンが法的責任を負わないことをルール化していくことが一番穏当な解決だとは思うが、うまくいくかどうか…。