沈黙博物館

小川洋子『沈黙博物館』、筑摩書房、2000

博物館の標本をつくる技師「僕」は、新しい博物館の設立計画に応募してある村にやってくる。その博物館を作ろうとしている施主の老婆、その養女、庭師、家政婦らに囲まれて技師は、毎日博物館の設立準備にあけくれるが、その博物館とは死んだ人間の形見を標本として保存する博物館だった、という話。甘いところのない話で読んでいて、気分がすっきりする。技師が元いた世界とのつながりを失って、次第に博物館の世界の人になっていく過程もいい。失われていくものに対する著者の愛惜の気持ちが強く感じられる。