謎の隣人 北朝鮮

金山宣夫『謎の隣人 北朝鮮』、廣済堂出版、1997

著者はまったく知らない人。奥付を見ると1936年生まれ、東洋学園大学教授、文明評論家、とある。著書はけっこうあるらしい。しかし文明評論家という肩書きははじめて見た。そもそも文明は「評論」の対象になるのだろうか。この本も、ちょっとどうかと思うこの肩書きに対応した内容。旅行記でもあり、社会分析でもあり、政策提言でもあり、という本なのだが、どの観点から見ても中途半端でつまらない。観察や分析の部分はそれほど外してはいないが、例えば関川夏央『退屈な迷宮 北朝鮮とは何だったのか』と比べると筆力の差が歴然としている。どの部分もあまり面白くないし、北朝鮮社会のどこかの深部に到達しているとも思えない。他の社会との比較も、表面的だし、何のためにやっているのかそもそもよくわからない。さらに政策提言の部分はめちゃくちゃ。知らないのなら書かなきゃいいのに、という感じ。