アメリカのパワーエリート

三輪裕範『アメリカのパワーエリート』、ちくま新書、2003

タイトルはやや内容とズレているような感じを受けるが、内容はアメリカ政治に関する基本的な教科書。しかし類書(大統領、議会、裁判所などの機関を個別に説明していくようなもの)とは異なり、権力の具体的な動きを見ていくために、政党、ロビイスト、大統領と議会の関係、大統領とホワイトハウス・スタッフという四つの要素に焦点をあてている。アメリカ政治に対して通り一遍の知識しかない読者にとっては、非常に役に立つ本である。例えば政権内部での首席補佐官などのスタッフの役割がわからないと、省庁(長官、副長官)ラインの動きのみに気をとられてしまうだろう。こういう日本的な偏りを修正することができるという意味で貴重。また政権から政権への時間的な流れの中で力関係がどのように変わったかということに重点をおいた記述がされており、歴史的な変化を把握するためにも役立つ。