ジャパン・ハンド

春原剛『ジャパン・ハンド』、文春新書、2006

主に90年代以後の日米関係を、アメリカのパワーエリートの中の「知日派人脈」に連なる人々の動きから追っていった本。良書である。アメリカの各政権や野にある知日派がどういう人々であり、彼らがどういう動機でどのように日米関係を支えてきたかがよくわかる。日本での外務官僚から政治家へのイニシアティブの移行と連動して、彼ら知日派の中の重要人物の影響力が増しているということもわかる。小泉政権になってからの日米蜜月関係を支えているのは、小泉、ブッシュの個人的関係だけではなく、彼らと日本側カウンターパートナーとの関係の深まりも強く影響している。欲を言えば、「ジャパン・パッシング」と言われ日米関係がやや停滞していたクリントン政権期に、かれら知日派がどう活動したのか、あるいは活動できなかったのか、また親中国人脈との相対的な比較の中での知日派人脈の位置づけなどについて、もっと言及されていればアメリカのアジア政策をより立体的に明らかにすることになったろうと思う。