エロマンガ・スタディーズ

永山薫エロマンガ・スタディーズ』、イーストプレス、2006

エロマンガ全般にわたる歴史・書評本。エロマンガの歴史をサーベイする第一部と、エロマンガを、ロリコン、巨乳、妹・近親相姦、陵辱、愛、SM、ジェンダー混乱もの(ショタ、ふたなり、性転換など)のジャンルごとに概観する第二部からなる。エロマンガ全体の歴史を含めた概説本は、ほかに例がないので(米澤嘉博のアックスでの連載は未読)、画期的な意味がある。それ以前の概説本は、70年代以前の古いエロマンガしか対象にしていないことを考慮すれば、この本の意義は非常に大きい。内容的にも通り一遍のコピペ本ではなく、実際に70年代からこまめにエロマンガをていねいに読んできた人でないとわからないていねいな書き方で、この分野での決定版といえる本である。さらに限定された視野からではあるが、日本社会とエロについての関係全体を見通す本にもなっている。マンガのコマが各所で引用されており、絵柄の変化という点から、エロに対する感覚の変化を体感できる内容にもなっている。類書がない点で非常に貴重な一冊。