靖国

坪内祐三靖国』、新潮文庫、2001

靖国神社の来歴を九段坂という広がりのある場所との関係で明らかにしようとした本。このねらいはおおよそうまくいっていると思う。特に明治時代に靖国神社がいろいろなイベント会場として使われ、その歴史は第二次大戦後にまで引き継がれていたということは、この本を読むまで知らなかったので勉強になった。やはり靖国神社というのは、正面からいいの悪いのという形で切り込んでいったのでは、うまく切れないいろいろな要素があるのだろう。その失敗の見本が高橋哲哉靖国問題』で、どうしてあんな駄作があんなに売れているのかよくわからない。この本も、戦後の部分にもっと紙幅をさいてくれたらという感想はあるが、芸のある本だと思う。