外交敗北

重村智計『外交敗北』、講談社、2006

重村智計による日朝交渉の内幕本。表題の意味は、「北朝鮮との外交交渉で、要求すべきことを最初から明確に要求さえしない日本外交は始まる前から負けている」ということ。どこまで信用してよいのか迷う部分もあるが(問題の性格上、取材源を明らかにできないことはやむを得ないから、これはないものねだりだけれども)、日朝交渉(特に小泉政権以後)を全体として細密に描き出していることはまちがいない。批判はほとんど名指しでされており(特に外務省の田中均審議官ら)、批判の中身も手厳しいが著者の書いている事実関係がほんとうならそれも当然と思える。それほど外務省も政治家(政府、自民党)もこの問題について認識が甘く、アメリカと世論に引っ張られてようやく北朝鮮の思惑にのせられずに済んだというのが本書の主旨。しかしわからないことはなぜ外務省が北朝鮮に対してここまで甘い認識しかもっていないのかということである(一部の政治家は北朝鮮からカネでも受け取っているのかもしれないが)。そういう認識は今となってはすっかり変わっていると信じたいが・・・