朝鮮半島「核」外交

重村智計朝鮮半島「核」外交』、講談社現代新書、2006

重村智計の新しい北朝鮮本。タイトルは核問題が主題であるかのようだが、実際は北朝鮮の経済状態やアメリカの金融制裁問題に関連した経済犯罪にも多くの紙数が割かれている。またこのような内容のほうが、北朝鮮の現状を理解するには適切である。これまでの著作と重複する部分があるが、少なくとも各開発問題、アメリカの金融制裁、7・1経済運営改善措置=いわゆる経済改革といったことについては新しい情報が多く盛り込まれている。読めば、ミサイル発射や核実験も含め、近年の北朝鮮外交は失敗の連続だということ、その原因の大きな部分はおそらく北朝鮮の国内政治にあること、現状では北朝鮮経済に建て直しの見込みはなく、仮に核問題で妥協が成立して外からキャッシュが北朝鮮に流れ込む状態が生じたとしても、北朝鮮経済の死期を引き延ばす効果以上のことはあまり期待できないこと、などがわかる。六カ国協議も期待できるものではなく、他方北朝鮮の「暴発」といった事態も考えられないということは、危機の長期化という結論に落ち着くことになろう。状況の困難さを実感させられる本。