きりぎりす

太宰治『きりぎりす』


画家が主人公の短編。語り手は画家の妻。

語り手はいい家のお嬢様。貧乏画家と見合いして、他の条件のいい男を振ってヨメにいくのだが、お嬢様、ガチの芸術家がよかったので貧乏でも楽しかった。ところが夫がだんだん売れだして、金もどんどん儲かる。家も大きくなるし、いいものが食べられるようになるのだが、そこで夫の尊大さ、ケチ、倨傲などなどが露骨に見えるようになってくる。

この画家の俗物ぶりも、たぶん太宰自身にとっては自画像みたいになっているのだろう。というか、妻は語りてであって、そんなに重要ではない。画家はもともと俗物だったので、妻はそれに気が付かなかっただけ。それが売れると、内面がバレてきた。太宰は自分がそうだったから、自嘲つきで舌を出してみたのだと思う。