折りたたみ北京

ケン・リュウ(編)、中原尚哉ほか訳『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー早川書房、2018


中国SF短編集。非常におもしろい。

アンソロジーで、七人の作家の13編と、エッセイ3編が載っている。

一番おもしろかったのは、劉慈欣「円」「神様の介護係」。「円」は、長編「三体」の一章を切り出して短編に仕立てたもの。戦国時代の歴史とSFをほどよく混ぜ合わせていて、中国的な傑作。「神様の介護係」は、現代中国ネタ(介護)をSFと合体させていて、これも中国的な傑作。

時事ネタや歴史ネタをSFにまぜておもしろい話をつくるのは、ある程度他の話にも通じる。表題作、郝景芳「折りたたみ北京」も、それ。しかし、ぜんぜんそうではない作品もあり、エッセイの中でも、「SF小説であって、あまり時事ネタと結びつけたり、社会批判と受け取ったりするな」と書かれている。これは検閲対策かもしれないが。

最近の日本SFすら読んでいないのに、中国SFを読んでいる暇はなさそうだが、今年は、「三体」の日本語訳が早川書房から出版されるという。「円」が十分おもしろかったのだし、日本語に訳されている数が少ないので、今はまだ読めるはず。これは買う。