黄金風景

太宰治『黄金風景』


これは戦前の作。1939年発表とある。ネタは、昔の女中。

昔は鈍で、バカにしか見えなかった女中の消息をいきなり主人公に告げる「お巡り」(この書き方は咎められなかったのか?)。バカ女中に会いたくない主人公は、お巡りとともに訪ねてきた女中の一家から逃げ出してしまうが、結局また自宅に戻ってくる。お巡りと女中が自分のことを「目下の者にもそれは親切に目をかけて下すった」と言うのを聞いて、涙する。

最後のところは戦争勝利に結び付けられているのだが、自分の歪んだ考えが、心のまっすぐな女中に正されるというのは、太宰がある意味、ずっとあこがれていたことだろう。一時の気の迷いであって、長続きはしないものだと思うが。