西洋美術史

木村泰司『西洋美術史ダイヤモンド社、2017


このタイトルの上に、「世界のビジネスエリートが身につける教養」とか書いてある。最近の教養を売り物にして、人に何かを売りつけようというよくない根性の産物。著者は、UCバークレーを出た人で、美術史の著作もたくさんある人なので、これはまともな人。

一読して、非常にわかりやすく、よい本。ギリシャ、ローマ期の美術からはじめて、印象派まで続く通史になっている。主要な時期、様式、作家、作品が網羅されているうえに、それらと社会との関係について主に論述されている。ここがおもしろく、特定の美術様式や作家がなぜ受けていたのか、なぜ受けていなかったのかが、ちゃんとわかるようになっている。

美術史の本としては、図版が小さく、白黒というのはちょっと、だが、そこはネットで検索とか、いろいろと方法があるので、読者側でなんとかすればよい。また、ページ数の関係があるのかもしれないが、印象派以後の現代美術については、美術館の紹介しかしておらず、作品紹介が皆無。これはどうなのか?教養と名乗るくらいなら、それはすべきでは?それ以後はバラバラすぎとしても、著者がそれについて何も知らないことはありえないと思う。