「ポスト宮崎駿:論

長山靖生『「ポスト宮崎駿」論 日本アニメの天才たち』文春新書、2017


SF評論で確立した地位を持つ著者によるアニメの歴史を踏まえたアニメ評論。個別の作家だけでなく、それらを踏まえた業界全体に対する評論になっているし、主要作品を網羅した観客に対するガイドブックにもなっている。

新海誠、押井・今・細田庵野ジブリ以前のアニメ、宮崎駿以外のジブリ、今後の展望にそれぞれ一章を費やしていて、この本一冊で、だいたいのことをわかるようになっている。著者は初期から継続しているオタクだから、主要作品を見ているのだが、驚異的な蓄積。

しかも、これだけの蓄積をこの短い頁数(218ページ)にまとめているところがすごい。作品ごとの解説もきちんとされているし、著者がこの分野に投入してきた時間が凝縮されている。

日本アニメが外国でどのように受け入れられているかについても、きちんと分析されている。ディズニーに伍して世界市場で地位を確立することはかんたんにはできないということ。

アニメの何を見ればいいのかわからないという人にも、すでにそれなりに見てきた人にも、適切な本になっている。たいへんな本。