薬害でっちあげ

村中璃子『薬害でっちあげ あまりに非科学的な子宮頸がんワクチン阻止運動』新潮社、2017


著者が、科学報道で賞をとったことで有名になったこの話、読んでみたが、本当に驚いた。

子宮頸がんワクチンの「副反応」とされるものは、実際にはワクチンのものではなく、心因性のもの。副反応があったかもしれない(薬との因果関係の証明なし)というケースが、ワクチン接種10万件につき2件の割合だということは、関係ないということ。

しかし、このワクチンのせいで、痛みやけいれんその他の障害が出たと言っている子供や親が一部の医者と組んでワクチン反対運動をしたおかげで接種は中止。その後も再開されていない。ワクチンの接種を受けなかったために増えた子宮頸がんの問題は、これらの人々の目に入らない。

反対している人たち(医師含む)の証拠は、明らかに科学的根拠になっておらず、「気のせい」もしくは、「研究不正」が疑われるレベル。しかし、薬害だと信じ込んでいる人には、「自分が苦しんでいる」こと自体が重要で、科学的説明の妥当性などまったく聞く耳を持たない。

反対している人たちの言っていることが、マスコミ、政治家その他を巻き込んで拡大し、社会運動になってしまったことが、この悲劇の原因。運動している人のツイッターを読んだが、まともな判断ができる人であればおかしいとすぐ気づくようなレベル。しかし現実にはこれを信じている一部の人々を説得することは不可能。その結果は社会的損失。

科学と一般人の関係について、考えさせられるところが大きい本。無知な人が感情に釣られることの結果は重大。