シャーデンフロイデ

中野信子シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』幻冬舎新書、2018


シャーデンフロイデ」というのは、他人の不幸を喜ぶ感情。これがオキシトシンによって生み出されるというのが著者の言っていること。オキシトシンは、他人との連帯を強めるように作用するホルモンだが、妬みや他人の不幸を喜ぶことにも作用する。

著者の説では、「集団の規範を乱す者を罰する」ことが、結果として集団のつながりを強めることになるから、人は不正義に対して懲罰的な態度をとるという。

愛と正義は、集団で結びつき、結束を強めるものだが、方向次第では他罰的なものになる。これもよく言われていること。正義のために悪を滅ぼすというのが、いちばん気持ちのよいもの。著者は暴力的衝動の起源にはあまり触れていないが。

記述がそれほど厳密なものではないので、解釈に疑問を感じるところもあるが、結論のだいたいは納得できる。倫理も方向性次第では非常に攻撃性を引き出すということ。