雨降り姫と砂漠王子

清原なつの『雨降り姫と砂漠王子』小学館


清原なつの「お伽ファンタジーシリーズ」の2巻。こちらのほうが、作者の好みが前の巻より前面に出ている。

「バブル姫とロスジェネ王子」は、時代を感じる。作者はバブルの時に30歳前くらいだったはずなので、バブルは自分の経験。浮かれた時代の上澄みを味わっていたはず。

「文通姫と眠り王子」は、きっと作者の好きなもの、手紙と文通の世界。絶対作者は文通をまめにしていた人。昔は、雑誌の文通コーナーというものがあったし、作者のような人が文通をまめにしていないはずはない。

「魔女見習い姫と・・・毒りんご王子」は、「年齢」要素が強く出ている。作者は、自分の年齢のこととこうして向き合っているのだろう。人間、年をとるし、死ぬ前に老化するのだ。

「浮き島姫とムーンベース王子」は、年齢が世代につながっている。結局、性は世代を残すためのものだということ。再生産の手段。システムが持続するための仕組み。作者は理系だから、よくわかっていらっしゃる。

で、いちばんのよみどころは、あとがきまんが「お姫様がいっぱい」。この2巻は全部王子様とお姫様の話だが、作者は作中の登場人物に「あんたたちは王子様に出会えただけでもまし」と言っている。作者は、王子様には出会えなかったということなのだが、最後の「浮き島姫」は、若いお姫様ではなく、お姫様を育てているおばあさんこそ本当の浮き島姫だと書いている。これも作者自身と二重写しになっているのだろう。