テロ
F.v.シーラッハ(酒寄真一訳)『テロ』東京創元社、2016
この前に見た舞台「TERROR テロ」の脚本。こちらはこちらでおもしろい。
上演台本は、これとそんなに違っているわけではなく、ほぼ同じ。ただ、長いセリフが多いので、こちらの方が、内容を反芻できるという楽しみはある。本質的には法律論をしているのではなく、倫理の話。
トロッコ問題は、注目点をどこにするかで、まるっきり結論が変わるものだが、この場合には、「人命は、それ自体が価値であり、数として測ることはできない」という主張と、「現実には、人命を多く残す選択肢と、少なく残す選択肢が存在する」という主張の対立。これが、「テロ」が現実に存在するという社会で議論されているので、アメリカやテロ攻撃にさらされているヨーロッパ社会では、「人命をより多く残す選択肢を選べ」という主張が支持されていることはうなずける。