人を見抜く「質問力」

御厨貴『人を見抜く「質問力」』ポプラ新書、2016


この本、元の版は、『「質問力」の教科書』講談社、2011。講談社は、自前の現代新書があるのに、なぜこの本の版権をポプラ社に譲るのか?非常におもしろい本なのに。理由がよくわからない。

御厨貴は、オーラル・ヒストリーの創始者だし、『時事放談』の司会者なので、本当の質問のプロ。質問のプロは、上手に質問を出し、人の話をちゃんと聞ける人。これができないといい答えは返ってこないし、何も聞き出せない。

この本を読むと、御厨貴自身が、オーラル・ヒストリーを行うにあたって、どういうことに気をつけていたか、誰からどんな方法で話を聞き出すことができたか、誰に対してどんな失敗をしたかという体験談が並んでいる。この方法が、「質問の仕方」を正しく説明するやり方で、御厨貴はそれをよく理解している人。

おもしろい話を聞くためには、「完璧な準備」が必要条件というわけではなく、聞き手の態度とか、いろんなことが重要。もちろん、相手が厳しい人の場合、質問者の知識や力量が試されているので、その場合には準備のできていない質問者は相手にされない。要は、相手に合わせて、適切な態度を取れるかどうかということで、これは工夫と経験を積み重ねていくしかない。

後藤田正晴宮沢喜一竹下登というような、物故した政治家の姿勢もおもしろい。大物政治家の人柄はいつもおもしろい。

オーラル・ヒストリーは、ライブだという著者の考えは非常に説得力がある。ライブでいい演奏をするためには、やはり準備と経験。