津軽地方とチェホフ

太宰治津軽地方とチェホフ」


これはエッセイ。短い。

太宰は自分で戯曲を書いていて(そのタイトルは、この文章では不詳)、そのために、いろいろ戯曲を読んでいたが、大正時代の戯曲があまりにもくだらないのであきれたという。引用されている戯曲はひどい出来(本当の引用なのかはわからない)。

大作家の戯曲でもくだらないと書いてあるのだが、ほめてあるのはチェーホフ(この文章ではチェホフ)。「ワーニャ伯父さん」、「桜の園」、「三人姉妹」が引用されている。まあ、チェーホフの戯曲をくだらないと言われたら、こっちが困るので、ほめられているのはあたりまえ。

で、どこがほめられているかといえば、「三人姉妹」の「意味などどこにもない」というトゥーゼンバフのセリフ。確かに、昔の話は、意味が無いといけないと作家が思っていたので、むりやりなんでも意味があることにされていた。なんでも意味が無いといけないというのは子供向け作品だけだと思うが、昔はそういうものだったのだろう。

太宰は、これを持ち出して「津軽地方のインテリゲンチャ」を貶しまくっている。インテリゲンチャなんて、どこでもいっしょなので、わざわざ津軽を引き合いに出さなくてもいいのに。津軽の人が読んだら嫌な感じがしただろう。