銀河帝国興亡史(1) ファウンデーション

アイザック・アシモフ(岡部宏之訳)『銀河帝国興亡史① ファウンデーション』ハヤカワ文庫、1984


これは子供時代に創元推理文庫の厚木淳訳で読んだ。設定はよく覚えていたのだが、後の展開はだいたい忘れていたから、読んでよかった。

初めて読んだ時に非常にひかれていたのはやはり設定。「心理歴史学」という発想にとても興奮した。一定以上の数がいる人間集団の行動は数学的に予測可能だというアイディア。ハリ・セルダンは、この学問の大成者なので、これで未来のことがわかる。

読んでみてさすがだと思わせられるのは、この後の展開。銀河帝国の滅亡も一度にわかりやすく起こったわけではなく、その後はサルヴァー・ハーディンとか、ホバー・マロウとか、ちゃんと新しい登場人物が出てきて、セルダン危機=歴史の節目を乗り切っていく。技術が歴史を動かしているのだが、危機を乗り切るのは結局個人という構成がいいと思う。

原子力が魔法のタネになっていたりするのは、時代制約でしかたがないが、今となっては「心理歴史学」の発想に難があるものなので、そこはしかたがないところ。でも、この本、原著は1951年に出ているので、そこはすごいところ。アメリカ人だけでなく、「歴史は科学である」と言っていた人たちにもアピールしただろう。

訳者が変わったのは、4作目以降の作品が出た時にそれを訳した岡部が、作品世界の統一を取るために、前作を訳し直したから。自分には厚木訳がとても響いていたが、これはこれでしかたがないところ。