あやつられる難民 ー政府、国連、NGOのはざまで

米川正子『あやつられる難民 ー政府、国連、NGOのはざまで』ちくま新書、2017


この本は、読んでみて本当におどろいた。著者は、元UNHCR職員、今は立教の先生。例は主に、コンゴ(DRC)とルワンダなのだが、著者は実際にUNHCR職員として、また大学教員として、現地でコンゴルワンダの難民、UNHCR、現地政府、NGOの中で、働いたり、情報を集めたりして拾ってきたことをもとに書いている本。

難民の状況についてのものの見方が、まるっきり変わった。これを読むまでは単に難民は「かわいそうな人」、UNHCRは、「難民を助けるえらい人」、NGOも同じようなもの、と考えていたが、コンゴルワンダでは、状況はぜんぜんそんなものではない。

簡単にいえば、UNHCRは官僚機構であり、その職員の仕事は、タスクを無難にこなし、現地政府とうまくやって、出世すること。現地政府は、難民を利用して、自分たちの政治的、軍事的目的を達成しようとしている人々、NGOは、うまく金をもらい、場合によっては現地政府やCIAの手先になって、彼らに手を貸している人々、難民はそれらに振り回されたり、協力したりしながら、アクターの一部として、振る舞っている人々。

考えてみれば当然のことで、一方的に可哀想な人とか、正義の人とか、そんなものは現実の社会には存在しない。その人なりの利害関係があって動いているのがあたりまえ。UNHCRや、NGOも同じ。難民も、その狭間で、なんとか生き延びていこうとしている人たち。

著者は、自分が「難民寄り」とはっきり言っているが、難民にもそれぞれにグループ分けがあり、グループごとに立場は違う。ルワンダ内戦やその事後処理についても、この本に書いてあるようなことは全然知らなかった。要するに、現ルワンダ政府は、問題を全部フツ族に押し付けているので、外部にはそういう宣伝が効いているというだけ。

世の中のことはいろいろな立場にたってものを見ないとわからないということ。勉強になったわ。