飛田をめざす者

杉坂圭介『飛田をめざす者 「爆買い」襲来と100年の計』徳間書店、2016


著者は、大阪の飛田新地で、店の経営とスカウトに長年携わっていて、今は引退して別の仕事をしている人。他にも飛田新地について数冊著書がある。

飛田新地遊郭として許可されたのが1916年、現在の場所に移転したのが1918年なので、だいたいできて100年。前身だった「難波新地」から数えると300年くらいたっているので、今年から記念イベントが多数ある。

ここがNHKの「探検バクモン」で紹介されたことは、ここで仕事をしている人たちにとっても画期的なことで、あの番組で飛田のことを知った人も多い。最近になるまで一部の人にしか知られていなかった場所が、モザイクつきとはいえ、全国放送で流れたのだから、それは大きなインパクトがあった。

しかし、不景気と、実際にここで働く女の子を調達するのが難しくなったという事情で、この売春街の存続もいろいろと困難がある。それを打開する方法の一つが、外国人、特に中国人観光客への対応。

言葉が通じない相手だとトラブルが起こる可能性も高いので、女の子からは中国人は嫌がられることが多いが、逆にそこに対応できるのであれば客層を拡大できるということ。中国語が通じる案内人をつけるとか、事情のわかった仲介人をつけるとか、いろいろと対応策はある。

著者が仕事をしていたのは、「姉系通り」と著者が言っている一角。飛田は、通りによって女の子の年齢と相場が決まっているので、「妖怪通り」「ババア通り」と以前呼ばれていたところ。しかし、30代前半の女の子も増えたので、ここもそれなりに客がついている。

客足が落ちているとはいえ、ここは稼ぐ意欲がある女の子には稼げるところ。15分や20分の「ショート」があるので、数をこなして売上げを出すことができる。15分で客が払うのは11000円で、女の子の取り分が5000円。予約の客を多く取れれば、1日で24万円とか25万円を稼ぐことも可能。

女性誌の記者に著者が話した内容がまとめられている章があり、そこを読めばここのシステムがわかる。女の子が稼げるようになるコツは、「笑顔」「姿勢」「声(の演技)」。これは納得。また、店の前で客を引いているやり手婆は、元はここのお店で接客をしていた嬢だった。いろいろと事情がわかっている人が管理をした方がよいということ。

客も常連客はセックスそのものよりも、コミュニケーションを求めてくる客多し。これはどこも同じか。だから「年金通り」で60くらいの「女の子」にも客はつく。コミュニケーション能力があれば何でもできるのだ。