ニュースのタブー

田中周紀『ニュースのタブー~特ダネ記者が見た報道現場の内幕~』光文社新書、2013


タイトルは本文とは違い、副題の方が正確というよくあるもの。内容は
共同通信記者からテレビ朝日記者へと転身した著者が、「新聞社・通信社とテレビ局では、ニュースの作り方、取材の仕方がどのように違うのか」を解説した本。

著者はもともと共同通信の経済部記者だった人だが、新聞社、通信社、NHKに比べて民放キー局の経済部は非常に手薄で、日常のニュースを十分に拾うことも難しい陣容。しかし、そもそも民放局では、日常的に起こるネタを拾うことそのものはそんなに重視されていない。

テレビ局ではあるが記事作りを中心に考えるNHKは例外で、民放局は「どのようにニュースの映像をつくるか」にほとんどの関心が集中している。だから記事そのものの内容よりも、どのような映像が撮れるのか、何分で収まるのかということが最も重要。

この映像制作を主に担っているのが、テレビ局本体ではない、制作会社のディレクター。民放局の報道記者は、常にディレクターと組んで仕事をしていかなければならない。著者は、取材能力を買われてテレビ局に転身したが、実際に制作にかかわってから、映像制作がどれだけたいへんなことかを知るようになったということ。

ニュース番組が実際にどのように作られているかを現場で経験した人の本なので、テレビ局の動きがおおよそわかるようになっていて助かる。テレビ朝日は、「ニュースステーション」(現報道ステーション」g看板番組なので、そこである程度の長さのニュースを出せることが、非常に社会的に影響を持っており、ニュースキャスター(この場合は久米宏)の役割も非常に重要だということがよくわかる。

また当然ながら、どのようなネタの視聴率が高いのかは経験的にわかっているので、テレビ局のにゅーすはそれに圧倒的に拘束されている。動物ネタや、なんでこんなくだらないネタを流すのかと思われるような場合は、ほとんどそれ。テレビを見ている人にわからないものは意味がないということ。