トーマス・ルフ展

トーマス・ルフ展」、東京国立近代美術館、2016.11.11


これは写真の展覧会。竹橋の近所に用事があったのでついでに行ってきた。

トーマス・ルフは、1958年生まれのドイツ人。歴史的に見てきたものは、そんなに変わらないはず。で、この写真家が何を写しているのかといえば、ふつうにカメラで何かを写しているのではない。

初期の写真は、実物を撮影しているのだが、それも2メートルくらいある人物の顔写真。被写体は、写真家の友達。美人でも美男子でもない、ふつうの30歳くらいの人。

まあ、こんな感じ。ふつうのお姉ちゃんで、なんでモデルになっているのかもよくわからない。

で、時代が後の方になってくると、もう「ものをカメラで撮る」写真ではなくなってきて、画像加工で何かをつくる人になっている。

月の表面(偏光メガネで立体視できる)とか、天体写真(土星)を加工して、輪の部分やら、球体部分に色付けしたものとか、報道写真と写真の裏に手書きされた撮影データを同じプリントに二重に焼いて何をどんな目的で撮影したかわかるようにしたもの(これが最新作)とか。報道写真のネタは、日本の昔の写真(新幹線とか、大阪万博とか)になっている。手書きされたデータは日本語なので、作家がわかるわけはないと思うが、それも含めておもしろいと思っているのだろう。

デジタル写真のピクセルをわざと拡大して、近くに寄るとボケ写真にしか見えないが、遠くからみるとなんとなくちゃんと写った写真に見えるものとか、とにかく写真をネタにしていろいろやりまくるという作品。

この展覧会が変わっているのは、館内の展示作品はすべて撮影可能ということ。動画はダメとか、三脚は使うなとかちょっとした制限はあるが、あとはこの展覧会のキャプションをつければ、自由にどこに載せてもいいことになっている。

絵でもいろいろとうるさいのに、この気前のよさはとてもいいと思う。おかげでいろいろと写真をとりまくってきた。